・「漢方」の歴史
・中医学と日本漢方
・東洋医学と西洋医学
・東洋医学と西洋医学の相違
・世界の動き
■「漢方」の歴史■
「漢方」は江戸時代後期(約300年ほど前)に生まれた日本語です。
「漢方」には”
漢(紀元前206年〜西暦220年に現在の中国で栄えた国)
から伝来した医術”という意味があります。
漢より伝来したこの医術(漢方)は日本が鎖国して以来300〜400年の時間を経て、日本の風土や日本人の体質に合わせて独自の発展をとげました。
江戸時代になり、オランダから西洋文化(蘭学)と同時に流入した西洋医学は「蘭方」と呼ばれるようになり、それに対して日本独自の医術を「漢方」と呼んで、両者を区別するようになりました。幕末には「漢方」伝来前の日本における医術を「和方」として探求する動きもあったようです。
その後、今から30年ほど前に行われた日中国交正常化を背景として「漢方」という言葉は「和漢」または「日本漢方」と呼ばれるに至りました。
■中医学と日本漢方■
「中医学」は第二次世界大戦後に中国で生まれた新しい言葉です。
中国では日本でいうところの西洋医学を「西医学」、中国で発祥し中国で発展してきた伝統医学を「中医学」と称し、西洋医学と中国伝統医学とを区別しました。
「中医学」と「日本漢方」の違いは起源を同じくしつつも、基本的な概念から細かな治療に到るまで細かな違いがあります。この違いは、簡単に言えば生粋の日本人と日系の外国人4世くらいでしょうか。どちらにも一長一短がありますが、双方の優れた点を融合させて、広く皆様の健康に役立てていくことが私どもの役割と存じております。
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■東洋医学と西洋医学■
日本では西洋的な自然科学に基づく医学を
「西洋医学」、広く西アジア(トルコ・イスタンブール以東)からインド、東南アジア、中国などアジア地域における伝統医学を
「東洋医学」と呼びます。
明治政府が西洋医学を国学と制定して以来、東洋医学が排斥された経緯もありましたが、近年では医科大・薬科大学教育の中にも東洋医学が組み込まれるなど変化の兆しがみられます。
※「東洋医学」の類義語に「東方医学(Eastern medicine)」があります。こちらは、中国医学(中国)、
アーユル・ヴェーダ(インド)、
チベット医学(チベット)、ジャムー(インドネシア)を加えた4つの医学を差します。
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■東洋医学と西洋医学の相違■
「西洋医学」が分析を手段として
ミクロ(微視的)な視点から病気本体を解明する
局所的医学であるのに対し、「東洋医学」は自然との調和・順応という形で
マクロ(巨視的)の視点から生命を捉える
全体医学です。
また「西洋医学」が精密な検査データを基にして
病名を重要視するのに対し、「東洋医学」は
患者の自覚症状を重んじ、病態を観察して治療に直結させます。
近年では西洋医学分野においてより厳密な実証を求めるエビデンス(経験を根拠にするのではなく、研究によって有効性を確かめた方法で治療を行うこと)に基づく医療が浸透しつつあると同時に、それと逆行する勢いの日本医学会の現状をも示す事になるでしょう。
上記のように「西洋医学」と「東洋医学」はその概念自体が大きく異なるので、一方の概念で他方を評価することは賢明な方法ではありません。「西洋医学」も「東洋医学」もそれぞれに優れた点があり、また限界があります。少々乱暴な言い方をすれば、
「西洋医学」は病気をみますが、「東洋医学」は病人をみるともいえます。
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■世界の動き■
折しも、
WHO(世界保健機構)は
「東洋医学」を正式に伝統医学・代用医療として認証しています。これは現代西洋医学が治療効果を発揮しつつも多くの批判に応えきれていないからという現実と、東洋医学による症状の改善報告が世界的に認められた証です。
すべては患者の健康に役立てるため、
「西洋医学」と「東洋医学」の優れた部分を融合して理想的な医療の実践を目指せる環境を整えることが切望されます。
※WHOは2000年の総会で『健康とは、肉体的・精神的・社会的・霊的に充分満足いく動的な状態をいい、単に疾病または病弱がみられない事ではない』と提唱し、理事会で採択されました。これは
「検査データに異常値が見られなければ、健康である。」との認識を否定している条文です。
総会での賛成国は、キリスト教圏の先進諸国と、イスラム教圏の全ての国、仏教圏の国々。反対国ゼロですが、棄権したのは日本、韓国、ポーランドなどでした。
現在日本では慣習的に疾病を定義づけるのは西洋医学とされていますが、世界の多くは「西洋医学」のみで患者を健康に導くには限界があると認識しています。この総会での採択は「
東洋医学」をはじめとする伝統医学・代替医療を「西洋医学」と併用しより総合的な医療を実践しようとする世界の潮流と、それに逆行する勢いの日本医学界の現状をも示すことになるでしょう。
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