● おねしょ(夜尿症)の東洋医学的な分析と治療 ●
中医学において遺尿(おねしょ)は肺・脾・腎(膀胱)の臓腑が関係していると考え、大まかに次の三つに分類されます。
1)足腰や下腹が冷えて膀胱が温められないタイプ(下元虚寒、腎気不足)

◎尿量が多く、回数は一晩に1〜数回
◎冬や寒い日に悪化する
◎疲れた時に悪化する
○顔色が白い
○足や腰に力が入らない改行
○まれに知能の遅れ
○熟眠すると尿意に気付かない
2)体内の水の代謝に関わる肺と脾の機能がバランスを崩して膀胱に負担を
かけるタイプ(脾肺気虚、膀胱失約)

◎尿量が少ないが、排尿回数が多い
◎疲れた時に悪化する
○顔色が黄色い、精神疲労、気力がない
○食欲不振、軟便
○息切れ、話をするにもだるい、多汗
3)ストレスとの関係が深く、肝が傷ついたために体内ののびやかな水の
流れが傷害されて膀胱に影響するタイプ(肝経湿熱、火熱内迫)

◎尿量も回数も少ない
◎小便が黄色く強いにおいがする
○歯ぎしり、怒りっぽい
○顔色が赤っぽい、白目が充実している
○我慢や緊張が高じると症状が悪化する
● 中医学的な治療 ●
カラダに現れた症状を注意深く観察し、カラダのどこにバランスの崩れが生じているか見定めて、そのバランスを整えることで遺尿(おねしょ)を改善します。冷えに対しては温め、エネルギー過多に対しては余分なエネルギーを取り除き、また腎や膀胱を丈夫にする、といった具合です。
東洋医学は膀胱だけでなく体全体に着眼しますので、尿とは関係がないと思われるような随伴症状までもが改善してくるという利点があります。
<参考処方>
六味丸(ろくみがん)、八味丸(はちみがん)、至宝三鞭丸(しほうさんべんがん)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、小建中湯(しょうけんちゅうとう)、黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)、知柏地黄丸(ちばくじおうがん)、桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)、柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)、越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)、など
● おねしょの生活指導 ●

おねしょの治療にとって、
生活指導はとても大切です。
まず、
「おこさない」「あせらない」「しからない」
の三原則を守りましょう。
■幼年期(4歳〜7歳)における生活指導
幼児期にみられるおねしょはまだ発達途上と考えますので、無理に薬を飲ませる必要はありません。
★「おこさない」「あせらない」「しからない」を守りましょう。
★水分は朝と昼に多めに与えて、夕方からの水分は控えめにしましょう。
★日中のおしっこは、もじもじしてもすぐに促さず、こころもち膀胱に溜めてから
トイレへ行かせるようにしましょう。もちろん、無理に我慢させる必要はありません。
★のどごしにゴクゴクと飲む習慣があると、つい飲み過ぎてしまいます。
一気飲みの習慣を改めましょう。
■学童期(7歳〜12歳)以降における生活指導
★夜間に起こすのをやめましょう
夜間に起こしてトイレで排尿させると、朝まで布団を濡らさずにすむこともあります。
でも、これは”トイレおねしょ”です。見かけ上は夜尿をしなくなりますが、実際には
睡眠のリズムが乱れてぐっしょり型のおねしょを固定させる可能性も示唆されて
います。また、しっかり膀胱に溜める習慣が出来ないため、かえっておねしょを
こじらせることもあります。夜間に起こすことはやめましょう。
★水分の飲み方を変えましょう。
おねしょがあると夜間の水分摂取を減らすようにしていることが多いと思います。
多尿型・混合型のお子さんは、水分の摂取量をさらに整 えると理想的です。
水分摂取の一日配分としては、朝から午前中にたっぷり(350〜400cc程)と
摂取させ、午後からは若干控え目(おやつの水分は100cc程)にし、夕食からは
しっかり制限(水分として100cc程、汁物や果物は夕食には控えて朝に与える
など)するのがコツです。
必要な水分量は食事内容や本人の体質、活動量、季節などによっても
変化します。
様子を見ながらチャレンジしてみましょう。
★排尿抑制訓練
排尿をこころもち我慢させることで膀胱容量を大きくする訓練です。
膀胱型・混合型のお子さんの予防法ですが、無理させる必要はありません。
■その他こころがけること
★規則正しい生活リズムを確立しましょう。
★夜、遅めの食事はやめましょう。
★体を冷やさないようにしましょう。
おねしょ(夜尿症)の重症度は、その時間帯である程度わかるとされ、治る時期もある程度は予測がつくとも言われています。
・就寝後すぐ…5〜6年
・夜中…3〜4年
・朝方…1〜2年
時々、キャンプや修学旅行などの学校行事の1週間ほど前になって「おねしょを直してください」と来局される親御さんがおられます。幼いお子さんの場合は生活指導だけでも充分に改善することがありますが、一週間で結果を出すのは大きな賭になります。
あせらず、あわてず、しっかりと治すためにも早めの治療をお勧めします。
また、大人のおねしょには何か重大な疾患が隠れている場合もあります。一人で悩まずにお近くの専門家にご相談下さい。
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